首都圏ではいま最も鉄道路線建設・延伸の動きがあると言える町田・相模原エリア。つい先日5月26日には、町田市と相模原市の両市長により小田急多摩線延伸に向けての覚書が交わされた。小田急多摩線が延伸すると、町田にとってはデメリットの方が大きいのに…
リニア中央新幹線橋本駅(仮)
さて、その覚書の中でも延伸時期の目安として触れられていた、2027年のリニア中央新幹線相模原市内駅(橋本駅付近)の開業。当初リニア中央新幹線の駅建設費用については、JR東海側が自治体への全額負担を求めていたが、自治体側との交渉が開業時期を遅らせてしまい、リニア中央新幹線開業のもう一つの意図、東海道新幹線インフラの大掛かりな劣化調査・補修という目的を実現できなくなる恐れもあったため、JR東海側が一転、全額負担ということで決定した。
当然ながら、JR東海が全額負担して建設する中間駅の姿というのは、自治体の駅周辺開発計画との擦り合わせのような足かせがないため、簡素なものになるだろう。ともすれば直営駅ナカ店舗だけで終わってしまうようなものかもしれない。
まあそれでも、相模原市内には今後複数路線延伸の話があるので、ターミナル機能を構成する一駅ということで考えれば、どんな形であれあるにこしたことはない。だが、その建設についてわりと意表をついた所から物言いがついた。
地下駅の建設が座間市の水源を脅かす?
リニア中央新幹線橋本駅(仮)ができるのは、地下20〜30mの深度。用地買収が不要となる地下40m以深の「大深度地下」を使わない。これは既存路線との乗り換えや圏央道との接続を考慮してとのことだ。
しかし、その深度での工事については、相模原台地に降り注いだ雨水を集め南東方面へとのびる地下水の礫層と重なり、橋本駅(仮)の建設が地下水水源を水道利用している座間市に影響を及ぼすのではという懸念が表れた。当然ツッコミを入れたのは座間市。
座間市は水道水源の85%が地下水
あまり知られていないが、座間市は市の水道の85%を地下水、残りの15%を県営水道からの受水という形でまかなっている。座間市の町おこしでは、水道から出る水がうまいというのは重要なアピールポイントだ。これがリニア中央新幹線の開業により地下水が来なくなってしまったら、アピールポイントが基地とヒマワリしかなくなってしまう。
ということで、座間市は「市地下水採取審査委員会」で審議ののち、JR東海側により深い深度での駅舎建設要望も盛り込んだ要望書を提出する予定であるという。
座間市と相模原市。別に深い事情はないだろうけど…
名水を売りにしている座間市が、水道水源を守るという切実性は大いに理解できる。けれども座間市の要望が通って橋本駅(仮)が大深度へと変更されると、相模原市内駅の重要性低下および用地買収を始めとする各種経済効果の減少で、相模原市側に大きく禍根を残す可能性もある。
座間市と相模原市の成立における歴史的経緯があるだけに、今後色々と波紋を呼ぶかもしれないニュースだ。
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