サッカーJ3武相決戦の横断幕「町田発ロマンスカー 相模大野は通過点」はホント?

意味も無く相模大野駅構内の写真 ネタ
意味も無く相模大野駅構内の写真

武相決戦または相武決戦と呼ばれる諍い

相模原市にて2008年、元日本代表の望月重良氏が中心となり、「SC相模原」というサッカーチームが結成される。SC相模原はその後、神奈川県社会人サッカーリーグを第一歩として各カテゴリーのリーグを怒濤の勢いで制覇、2014年からはJリーグに加盟し、J3カテゴリからさらなる飛躍を目指している(さらっと書いたけど、スゴい話です)。

一方、町田市には1977年に創設された少年サッカーチーム「FC町田トレーニングセンター」から、トップチームが選抜され結成されたという由来を持つ、「FC町田ゼルビア」というサッカーチームがある。SC相模原、ゼルビアともに特定企業のサッカーチームといったような出自を持たない市民球団として、地域住民からの狭く深い広い支持を得ている(ゼルビアを応援する集まりから飛び出した町田アイドル「ミラクルマーチ」なんてのもある。こちらも色々とスゴい)。

この2チームが、今年は同じJ3の舞台で争っている。地域に根付いたスポーツチーム同士の対決には、「○○ダービー」といったような名称がつけられることが多いが、以前は2チームの対決が、「境川ダービー」と呼ばれていた。この名称はとても分かり易くて良かったと思うのだが(ソウルリバーだし)、歴史的事実としてのガチの水利争いを連想させるからか、取りやめになってしまった。公募の結果、ゼルビア側からは「武相決戦」、SC相模原側からは「相武決戦」という呼称にするということに決まった。メディアなどで報道されるときは、おそらくホームチーム側にたっての呼称で表現されることになるだろう。

武相決戦でロマンスカー横断幕が出る

で、先日6月8日(日)に行われた2回目の武相決戦。ゼルビア側のゴール裏から出た以下の横断幕が話題となっている。

町田発ロマンスカー 相模大野は通過点

この横断幕に対して、SC相模原側は「リニアは相模原!」と応酬したとか。煽り合いとしては、デリケートな問題は避けつつ痛快なものである。ゼルビアのユニフォーム背中スポンサーである小田急電鉄の宣伝にもなるし。
ただ、この横断幕を町田市民・相模原市民が見たときに、2度見、3度見してしまうくらいには意味が分からない。むしろジワジワ面白い。流石シュールギャグの大家である神奈川県民(代表例:ふかわりょう)の考えるキャッチコピーである。

ロマンスカー横断幕へのツッコミ

地域外の人にも分かり易いように補足すると、ロマンスカーというのは小田急電鉄の特急列車で、新宿から出て小田原方面に行くものと、江ノ島方面に行くものがあり、相模大野駅で路線が分かれる。で、町田駅は相模大野駅の一つ前の駅である。町田駅の住所が町田市で、相模大野駅が相模原市南区。

意味も無く相模大野駅構内の写真

意味も無く相模大野駅構内の写真

特急列車であるロマンスカーは、隣接する2駅の両方に停車するわけが無いので、必然どちらかの駅を通過する。だから、横断幕を文字通りとると、「当たり前じゃん」「そらそうよ」ということになる。小田急電鉄がそれを一番主張したいに違いない。

相模大野駅停車のロマンスカーは少ないのか

好意的に意味を汲み取る努力をしてみよう。これはロマンスカーのうち、町田駅には停車して相模大野駅を通過する列車の本数がほとんど(相模大野駅の重要性が相対的に低い)であると煽っているのかもしれない。
町田駅には停まったロマンスカーがその後相模大野駅を通過するためには、下り方面のロマンスカーでなければならない。そこで全下りロマンスカーのうち、町田駅停車と相模大野駅停車の割合を時刻表で調査してみた。以下がその調査結果となる。

下りロマンスカー町田駅停車・相模大野駅停車の本数と割合
平日/土曜・休日 町田駅停車 相模大野駅停車 その他(両駅通過・多摩線) 合計
平日 31本(58.5%) 16本(30.2%) 6本(11.3%) 53本
土曜・休日 35本(62.5%) 19本(33.9%) 2本(3.6%) 56本

結論。そこまで圧倒的な差は無い。むしろ、「相模大野駅なんか通過点〜!」と煽る人間は、町田駅を通るロマンスカーのうち3本に1本くらいの割合が通過するのを、唇を噛み締めて見守らなければならない…

町田発ロマンスカーって、上り方面の事?

“町田発”という部分については、町田駅を発車したという意味でなく、町田駅始発ということなのかもしれない。日本語的にこちらの方がより自然な解釈である。
しかし、実は町田駅始発の下りロマンスカーというものは運行されていない。では新宿方面への上りはというと、町田駅始発の列車が存在する。もしやこれのことを言っているのだろうか。
でも、普通に考えれば分かるが、町田駅始発の列車がそれより前の駅である相模大野駅を通過できる訳がない。物理的に不可能なのである。

いやいや、まだ頓珍漢なスローガンと決めつけるのは早いだろう。町田駅始発上り方面のロマンスカーは相模大野にある車庫を出て町田駅までやってくるわけである。このときに相模大野駅を通過しているはず。そうとなれば町田発のロマンスカーにとって相模大野は通過点じゃないか!
でも、時刻表をチェックするとわかるのだが、町田駅始発上り方面ロマンスカーの本数は、1日に2本、上り方面始発の時間にしかない。そして、始発時間帯には相模大野駅始発(もちろん町田駅を通過)のロマンスカーというものがあり、平日に1本、土曜・休日には2本運行されているのである。煽り文句がそのまま跳ね返ってくる!

でも、この横断幕の一番面白い所って…

このように、今回のゼルビア側の横断幕は、シュールギャグであったとしか考えられない内容なのである。町田市民も、相模原市民も、小田急電鉄ですら3度見するキャッチコピーであることは間違いない。
でも、一番の笑いどころはそこではないかもしれない。SC相模原のホームスタジアムは麻溝公園のギオンスタジアムで、確かに相模原市南区にあるのだが、別に小田急線の相模大野駅が最寄り駅というわけではない(最寄りはJR相模線の原当麻駅になるだろう)。つまり、SC相模原を煽るために相模大野駅を出してくるのが、全く見当違いなのである。

なんでこのような事態になったかというと、きっと町田市民のイメージできる相模原というのが、小田急線で繋がっている相模大野駅が限界なのだろう。相模原市民はよく町田市と共同体的な感覚を抱いているが、当の町田市民は実は相模原市をよく知らない。相模原市 = 相模大野駅なのである。多分、「リニアは相模原(相模原市緑区)!」と煽り返しても、お互いに煽りが全くかみ合っていない状態だろう。
「武相決戦」「相武決戦」とライバル関係を演出しても、お互いあんまり相手の事を知らないであろう所が面白い。まあまだこれからなんだという事にしておこう。

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